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2024.7.26更新 人新世について

 

人新世の提案 1950年以後のCO2の急速な増大は,それまでの気候変動システムを大きく変換させるもので,人が支配するようになった1950年以後を人新世と呼び,完新世と切り離そうという提案がなされていましたが,この提案は公式な場で承認されませんでした. 完新世を1950 年から分けようという人新世は公式には否認されましたが,その提案の中身自体は非常に重要な意味を持つと考えます.特に,気候変動上の転換点としての評価がポイントとなると思います.その背景には,CO2やメタンなどの温室効果ガスの増大が正確に求められるようになった科学技術の進歩があります.

 南極大陸やグリーンランドに厚く集積した氷をコアで採取し,研究室に持ち帰って精細な分析を行うことが可能になりました.とりわけ,氷に含まれる空気を丹念に取り出して大気の組成を分析することが可能となり,画期的な研究成果がもたらされました.それは大気中のCO2濃度の正確な把握につながりました.その成果は1950年以降の極めて急激なCO2濃度の上昇を示しました.過去何回もの氷期/間氷期を通じて,CO2濃度は170 ppm(氷期)~320 ppm(間氷期)の幅に収まっていました.しかし1950年以降, その上昇は著しく,320ppmを越えて,2024年には423ppmとなり,過去,第四紀を通じて認められなかった値(第四紀の前のPliocene やMioceneの温暖期並み)を示すとともに,その変化のスピードはけた違いの驚くべきものとなっています.過去80万年間の気候変動は10万年おきに氷期・間氷期を繰り返し,日射量の周期的変動の下で北半球にも氷河が拡大する氷期を繰り返してきました.そうした過去の気候変動のシステムが切り替わる可能性が強いと考えられるようになったのです.その原因は人間活動に基づくCO2(温室効果ガス)の増大です.すでに放出されたCO2は大気中に長く残存するため,次の氷期の到来はミランコビッチサイクル1回分を飛ばして10万年以後になるとの考えも示されています(Waters,et al, 2023). その中での人新世の提案は,1950年を境にこれまでの気候変動システムから,人間活動に支配された新たな気候変動システムに切り替わる,という意味を持っていました.

  人新世の提案には気候変動だけでなく,生物圏にかかわるものをはじめ非常に広範な事象における1950年以降の変化が含められています. 地質年代区分としては人新世は否認されましたが,温室効果ガスの急速な増大に基づく気候変動システムの転換については,引き続き検討することが必要であり,それは人類全体にとって急務であると思います.

 

Waters, C. et al. Part 1: Anthropocene Series/Epoch: stratigraphic context and justification of rank. The Anthropocene Epoch and Crawfordian Age: proposals by the Anthropocene Working Group. doi: 10.31223/X5MQ3C (2023).

 

 

日本第四紀学会「「人新世の科学的根拠とその否認について」の解説文公開」のお知らせ

 

日本第四紀学会ホームページ上で、年代層序単元としての「人新世」の科学的根拠とその否認について-人新世作業部会の提案書に基づいた解説-が公開されました。

解説資料は、概略版と詳細版の2タイプとなります。

 

詳しくはこちら

 


2024.3.25更新 武蔵野台地に関する研究成果について

 

 2019年度から3年間の文部科学省の科学研究費に基づく武蔵野台地の地盤の解明をテーマに取り組みました.2022年度に終了しましたが多くの研究成果が得られました.その成果の一部を日本大学文理学部自然科学研究所「研究紀要」に投稿し,2023年に刊行されました.約30ページにわたるもので,前半に当たります.後半の約30ページも同研究紀要に投稿し.2024年2月末に刊行となりました.前半,後半がそろいましたので,是非とも皆さんにはお目通しをお願いいたします.

 各論文のpdfは下記から閲覧・ダウンロードいただけます.

後半

 

遠藤邦彦・須貝俊彦・杉中佑輔・石綿しげ子・隅田まり・野口真利江・関本勝久・鈴木正章 大里重人・近藤玲介・中尾有利子・中山俊雄・是枝若奈・堀 伸三郎・竹村貴人(2024)武蔵野台地における中・後期更新世の地形・地質と古地理変遷 ―主としてボーリングデータに基づく―.日本大学文理学部自然科学研究所「研究紀要」,No.59,p.109-142.

 

 

ダウンロード
遠藤ほか2024武蔵野台地古地理変遷_研究紀要.pdf
PDFファイル 81.6 MB

 

※ダウンロードが重い場合は下の圧縮版をご利用ください.

ダウンロード
圧縮版遠藤他2024武蔵野台地古地理変遷_研究紀要.pdf
PDFファイル 7.7 MB

 

前半

 

遠藤邦彦・須貝俊彦・隅田まり・石綿しげ子・近藤玲介・杉中佑輔・鈴木正章・中尾有利子・野口真利江・関本勝久・中山俊雄・是枝若奈・竹村貴人(2023)武蔵野台地におけるボーリング゙試料に基づく中・後期更新世の地質層序と古環境 ―基準ボーリングコアの設定を中心に―.日本大学文理学部自然科学研究所「研究紀要」,No.58,p.153-183.

 

 

ダウンロード
遠藤ほか2023ボーリング試料地質層序_研究紀要.pdf
PDFファイル 36.5 MB
ダウンロード
遠藤ほか(2023)の圧縮PDFファイル
遠藤ほか2023ボーリング試料地質層序_圧縮.pdf
PDFファイル 2.7 MB


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