山川さんの解説

最終更新2023.7.4

 

 当サイトでは感覚的に理解しやすいように,天気図やエマグラム,気象衛星からの可視画像,赤外線画像など多く使用しています.それらは情報量が一杯で,見れば見るほど面白いものです.

 でも,ちょっと待って.街中で,あるいは部屋の窓から,ふと見上げた空からもいろんな事がわかるんですよ.

 空のスナップ写真から読み取ったあれこれを閑談します.

 

2023年

7月1日(多重レンズ雲)

6月16日(積雲・積乱雲の消長)

6月15日(漏斗雲)

6月10日(並列する積雲)

6月2日(乱層雲による強雨帯)

6月1日(笠雲・旗雲)

5月20日(層積雲)

5月8日(層積雲・巻雲)

5月6日(ブーメラン状の吊るし雲)

5月3日(高層の巻雲・波状雲)

4月30日(層積雲・渦状雲)

4月29日(放射状巻雲)

4月28日(ケルビン・ヘルムホルツ波)


2023年7月1日

撮影:石綿しげ子 解説:山川修治

 

 富士山の風上側にあたる潮岬の高層データが使えるようになりました。700~770hPa(約3km)付近に下層ジェットがWSW約25m/sで吹いており、770~800hPaにある逆転層の下面でレンズ雲が形成されやすい状況だったといえるでしょう。

 山岳効果で上記の安定層が数層に分かれ、レンズ雲も多重になって現れたのだろうと推測しています。

 


2023年6月16日

撮影:遠藤邦彦 解説:山川修治

 

 写真15 寒冷渦が東に抜け、北西の風が入ったため、関東地方の大部分では青空が広がりました。上空に残った寒気のため、不安定状態が幾分あり、積雲・積乱雲が所々で発生しました。雲底部分の暗い部分は、雲粒の水滴が大きいことを示しています。

 

 写真20 7層ほどに立ち上った積雲(Cu)は、周辺の優勢な山越え下降流によって崩され、高積雲(Ac)に変化し、消滅しかかっている様子がうかがえます。富士山方面の積雲群も中層の下降流によって雲頂部が抑えられているようですね。

 

 写真40 東北地方では寒冷渦の影響で積乱雲が発達したところもありますが、関東地方には北西風が中央日本の山地を越えて吹き降り、積雲の発達が抑えられ、レンズ雲も見られます。富士山の風下側では、山岳波動で積雲が盛り上がっているのが特徴的ですね。

 


2023年6月15日

撮影:遠藤邦彦 解説:山川修治

 

 もう少しのところで「漏斗雲」ですね。明日(6/16)にかけて、寒冷渦の通過により、関東地方でも降雹・竜巻の恐れがあります。

 

 この日は、佐賀県の鳥栖市、福岡県の久留米市、大分県の日田市・杵築市山香・大分市宮川内・大在などで降雹となりました。当日、寒冷渦(上空に寒気を伴う低気圧)が日本海を東進し、その南側に当たる日本列島各地で積乱雲が発達しました。前日6/14には、つくば未来市で積乱雲の雲底部分にロート雲が発生しました(タッチダウンすると竜巻)が、これは大気の不安定度が大きいことを示しています。積乱雲が発達すると、竜巻や降雹が生ずることがあるので要警戒です。

 


2023年6月10日

撮影:遠藤邦彦 解説:山川修治

 

 一定方向に積雲が並んでいます。南岸に梅雨前線が停滞し、その前線面を挟んで上下の鉛直シアでトランスバースラインと呼ばれる雲の通り道ができたと考えられます。

 

 


2023年6月2日

撮影:遠藤邦彦 解説:山川修治

 

 北方へ行くほど乱層雲(Ns)が厚さを増している様子が見受けられます。南方からは、台風2302号の東側からアウターバンドの南風に伴う積乱雲(Cb)群が入り、前線付近のCbを含むNsによる強雨帯(テ―パリングクラウド)を発達させ、豪雨に繋がったとみられます。線状降水帯にこだわり過ぎると「木を見て森を見ない」ということになりかねず、後追い解析で災害が先行してしまったともいえるでしょう。

 


2023年6月1日

撮影:遠藤邦彦 解説:山川修治

 

 台風が近づいてくると雲を楽しめます。この写真をよく見てみると、笠雲と旗雲が現れています。河口湖のWPFを参照すると、3~4km上空で強い西風が吹いていて、旗雲の発現条件も備わっていたといえそうです。

 


2023年5月20日

撮影:遠藤邦彦 解説:山川修治

 

 代表的な層積雲(Sc)ですね。北日本を寒冷前線が通過中で、その南方、関東地方には下層の厚い雲がかかりました。この日15時、はるか南方、北緯6.6°-東経148.9°に台風2302号が発生、急発達し、今後の挙動が懸念されます。

 


2023年5月8日

撮影:遠藤邦彦 解説:山川修治

 

 活発な停滞前線のキンク(前線性波動)が関東沖に残り、暗い層積雲が少し残留しています。おおむね高気圧圏内に入り、巻雲が彩雲がかって美しく舞っています。

 

≪ 皐月雨 去って舞うのは 美巻雲 ≫

 


2023年5月6日

撮影:杉本悠樹 解説:山川修治

 

 北東側には吊るし雲(複数のブーメラン型)、さらに風下側には再び上昇した気流によるレンズ雲を含む雲系が見られ、興味深いですね。

 


2023年5月3日

撮影:石綿しげ子 解説:遠藤邦彦

 

 関東平野の地上風向は、南~西南西、中央部の気温は24℃。

 南西方面は丹沢山地が極くうっすら見える程度で、視界はあまり効きません。薄雲と霞み。ただし11時ごろには石綿さんが山頂に雪をかぶった富士山を撮影しているので、その後海から運ばれた水蒸気により視界が悪化してきたと言えるようです。

 

 夕方、徐々に富士山が何とか見えるようになってきました。18時過ぎにはやや明瞭に見えています。

 但し午前中に見られた山頂部の雪は融けた可能性が強いです。

 

撮影:遠藤邦彦 解説:山川修治

写真9 高層の綺麗な巻雲は、局地的な鉛直シア(雲直方向に風向・風速が異なること)によって上昇流域で氷晶の集団が発生した一方、下降流域では消失したことに対応すると考えられます。

 

写真18 高層の波状雲は概ねW風の下降中で短周期の上昇流も交互に生じた結果とみられます。

 

写真28 大きな高気圧圏内で雲が少ないのですが、中下層では一部小規模な対流性雲もみられ、その下から夕日が差し、濃淡のある夕焼けを醸し出しています。

 


2023年4月30日

撮影:杉本悠樹 解説:山川修治

 

 寒冷前線が東方へ抜け、寒気団内入り、層積雲(下層の団塊状雲)が出現しました。河口湖WPF⑫によれば、富士山頂付近ではWSW上昇流、その上層(約4km)でWSW下降流(昇温し安定層を形成)がみられ、その安定層下面に笠雲が形成されたと考えられます。風下側(写真左側)の渦状雲は山腹を迂回した気流が収束したことにより生じたと推測されます。

 


2023年4月29日

撮影:杉本悠樹 解説:山川修治

 

 見事な放射状巻雲ですね。綺麗な雲ですが、晴天乱流(CAT)の恐れもあるので要注意ともいえます。

 


2023年4月28日

撮影:遠藤邦彦 解説:山川修治

 

 ケルビン・ヘルムホルツ波(KH波)が現れています。移動性高気圧の沈降流のもとで発生したと考えられます。