フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火とその影響(トンガ)

最終更新 2022.1.24

 2022.1.21

2022.1.18

目次

2022.1.18 1.噴火そのもの

2022.1.18 2.潮位変化と気圧変化

2022.1.21 3.現地情報から

2022.1.21 4.火山爆発の衝撃波

 

1.噴火そのもの

 1月15日13時10分に,トンガ諸島の海底火山が噴火.カルデラ火山でカルデラ壁の一部が島になっていた.昨年までの活動(海底噴火か)で火山島ができていたらしい.

 噴煙の高さは16,000m,20,000m,あるいはそれ以上とも言われている.

 

 

 公開されたひまわりやそのほかの衛星画像の噴煙の広がり方は,1991年に起こったフィリピンのピナツボ噴火を思い起こさせるが,ピナツボ噴火では噴煙柱の広がりは約400km,高度3万ー3.5万m,噴火後の成層圏に到達したエアロゾルの影響で,地球の気候が寒冷化したとされる(気候への影響).

 ピナツボ噴火については H-U シュミンケ著:火山学(隅田まり・西村裕一訳)が詳しい.

 

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今日は何があった日?#6月15日は1991(平成3)年ピナツボ火山の噴火があった日

 

 

2.潮位変化と気圧変化

 今回特に注目されるのが,日本列島で認められた潮位変化(津波?)と気圧変化である.

 潮位変化は, トンガやトンガ周囲で発生した津波の伝播状況に基づき,当初日本への津波の影響は小さいものと判断された. しかし,予測された津波到達時刻(23時頃)より2.5時間も早い20時半頃に,奄美大島の小湊港で1.2mの潮位上昇があったため,奄美群島,吐噶喇(トカラ)列島に津波警報が発令され,そのほか太平洋岸に広く注意報が出された.

 その後久慈港で1m超の潮位上昇のあった岩手県にも警報が出されたが,後これらは解除された.

 この潮位変化によって漁船の転覆や牡蠣の養殖筏の漂流などの被害が出ている.

 報道会見を行った気象庁も,通常の津波とは異なるメカニズムのものと困惑していた.

 

 日本列島の各地で認められた気圧の変化を以下の図で見てみよう.

 気圧の変化はほぼ 2hPaである.このような現象がなぜ起こったのか,おそらく我々が未だ認識をしたことのない現象ではないかと思われるので,今後検証する必要があるが,噴火によって生じた衝撃波によるものではないかという考えが出されている.その後,さらにヒントになる事実がウェザーニュースから発表された.17日の9時頃に再び気圧変化が記録されたことである.地球を1周して再び到達したのではないかと議論になっている.

 

 現地(トンガ)の様子は通信状況が悪く,あまり伝わってこないが,火山活動そのものや津波による災害の発生が心配である.

図 2022年1月15日の気圧変化 データは気象庁サイトから
図 2022年1月15日の気圧変化 データは気象庁サイトから

 

 

3.現地情報から

 2022.1.21

 

 1.18頃から少しづつ現地情報が入り始めた.

 

1.18の報道

 噴火前と後の衛星画像が公開され,噴火前に存在した火山島は,噴火後にはなくなりわずかに小さな島が点在するのみ,という状況が明らかになった.火山島は海底にそれなりの大きさの山体を持っていたはずだから,その山体が崩壊した可能性が強いと思われる.この噴火は噴火前の島に見られた火口からではなく,海底に隠れていたカルデラからではないだろうか.

 

 現地の状況に関しては,津波は最大で15mまで到達した.火山灰がかなり積もっている.水が火山灰で汚染され、飲料水が不足している.現地との通信は海底ケーブルが破損したため途絶えている.物資輸送に不可欠な飛行場が火山灰で覆われ,除灰が追い付いていない,---等.トンガ諸島には多数の島があり,全貌がつかめない.

 

1.20の報道

 日本政府も飲料水等の緊急支援物資を積んだ自衛隊機を派遣すると発表(当面オーストラリアへ).ニュージーランドやオーストラリアなどの近隣諸国を含めた緊急の国際的援助が必要と思われる. 

 

1.21の情報

 飛行場の除灰が済んで,オーストラリアやニュージーランドからの救援機が到着した.日本の救援機も飛び立った.現地の被害状況は場所によりさまざまである。概して被害の甚大な島からは多分情報は入ってないのだろう. 

 

 

4.火山爆発の衝撃波

 2022.1.24

 

 火山爆発によって発生する衝撃波に関しては,田中康裕氏による「地球を巡る火山爆発の衝撃波」という非常に詳しい解説が出ています.冒頭に「火山爆発で生ずる爆発音は,時に1000㎞以上も離れた遠方で聞こえることがあり,その時の衝撃で発生する空振(気圧変動)は稀に地球を1周以上回ることがある.」という文章からまさに今回の事例に対する必読文献の1つであることが分かります.

 1958年の浅間山の噴火,1883年のインドネシアのクラカトア火山の噴火,1956年のカムチャツカ半島のベズイミヤン火山の噴火,1980年のアメリカ西岸のセントへレンズ火山の噴火,1888年の磐梯山の噴火,1952年の明神礁の爆発の事例が挙げられています.以上の事例のうち海外のものと磐梯山の例は,いずれも山体を吹き飛ばしていることが共通しています.すさまじい大噴火からの顕著な衝撃波の発生だったわけです.詳細については是非この解説を参照してください.

 

J-STAGEからダウンロードできます.

  田中康裕(1984)地球を巡る火山爆発の衝撃波.日本音響学会誌,40,830-836