ニュースから

富士山ハザードマップの改定

 

 3月26日,富士山のハザードマップ改訂版が発表されました.

 

 2000年10月頃から富士山の直下で低周波地震が多発したのを機に,2004年(平成16年)6月に富士山ハザードマップ検討委員会によりハザードマップが策定・公開されました.その後富士山の過去の噴火の様子など様々な調査・研究が進み,被害はもっと広範囲に及ぶ可能性が出てきました.そこで富士山火山防災協議会では,平成30年から「富士山ハザードマップ(改訂版)検討委員会」を設置しハザードマップの見直しを進め,この度改訂版を発表しました.

 

 改訂版ハザードマップの大きな変更点は,対象噴火年代,想定火口範囲,地形メッシュサイズ,溶岩の噴出量の4点です.

 

1.対象噴火年代

 改定前のハザードマップでは,3200年前から現在までに発生した噴火の情報を基にして検討が行われました.これは宮地(1988)で示された新富士火山の活動期(約11,000年前から現在)を5つの噴火ステージに分けたうちの,ステージ4・5に相当します.この頃の噴火の特徴は山頂付近の火口からの比較的規模の大きな火砕物噴火(ステージ4)から, 山腹の火口からの火砕物噴火及び溶岩流噴火(ステージ5)となっており,これらのステージの噴火事例を対象にしていました.

 一方改訂版では,2014年発行の富士火山地質図(第2版)に基づき再設定された富士火山の噴火年代区分を採用して対象噴火年代を設定しています.この区分によると,過去1万年の間では約5,600年前以降が特に噴火活動が活発であったとされるため,改訂版では5,600年前以降を対象としました.

 

2.想定火口範囲 

 改定前のハザードマップでは約3200年前以降の比較的規模の大きな噴火を起こした火口に注目して想定火口範囲を設定していました.

 一方,最近の研究によるとおよそ5,600年前以降,富士火山では約180回もの噴火が確認されていて,このうち96%が小~中規模の噴火だということです.

 富士山の噴火は必ずしも山頂火口から発生するわけではありません.特に小~中規模の噴火の多くは側火山や割れ目火口といった山腹斜面にある火口から噴火します.しかし,富士山の山腹は青木ヶ原の樹海がそうであるように木々に覆われていたり,足元がデコボコしているため調査が難しく,未知の火口が多く潜んでいました.

 そんな未知の火口の発見に貢献したのが赤色立体地図(千葉ほか,2003など)です.赤色立体地図によって丸裸にされた富士山の山腹斜面には,従来発見されていなかった多くの割れ目火口や側火山が発見されたのです.

 一方山頂付近は火砕物が厚く堆積しているため,過去に噴火した火口が埋もれてしまっている可能性があります.

 そこで改訂版のハザードマップでは安全を考慮して山頂から半径4km以内の全域と,新たに追加された中~小規模噴火の火口から半径4km以内の全域を想定火口範囲として設定しました.

 

3.地形メッシュサイズ

 航空測量成果やシミュレーションプログラム及びそれに供するコンピュータの性能は年々向上しています.

 そこで,溶岩流・火砕流・融雪型火山泥流のシミュレーションに用いる地形メッシュを従来よりも細かい20mメッシュDEMに変更し,従来よりも精緻な地形モデルを用いた各現象のシミュレーションを行うことが可能になりました.

 

4.溶岩の噴出量  

 これまでのハザードマップで採用されていた大規模噴火の溶岩流の噴出量は 7億m3 でありました.これは宮地・小山(2002)で求められた宝永噴火(西暦1707年)での総噴出量に基づいたものです.

 その後の研究で,貞観噴火(西暦864~866年)で噴出した溶岩の噴出量を求めるために,貞観噴火の際に青木ヶ原溶岩によって埋め立てられた古代湖「せのうみ」の最深部と推定される位置で行われたボーリング調査が行われました.

 その結果などから,貞観噴火で噴出した溶岩の噴出量が13億3に及ぶことがわかったため,改訂版ではこの値が採用されました.    

 

 火山現象(溶岩流,火砕流,融雪型火山泥流)の到達時間・範囲を表すドリルマップは,発生地点や規模ごとに600枚以上に及びます.これらを基に,より地域の情報に結びついた細やかな防災・避難計画や防災マップが作成されることが期待されます.

 

 報告書全文は下記で公表されています. 活火山である富士山が次いつ噴火するかはわかりません.いざというときに備えて,個人個人で理解を深めていきましょう.

 

令和2年度第11回富士山火山防災対策協議会資料(静岡県公式ホームページ ふじのくに>静岡県危機管理部危機情報課>富士山火山防災対策)

富士山火山防災対策協議会(山梨県公式ホームページ>防災情報>>総合情報)

 (Y.S.)


2021年3月19日 ファグラダルスフィヤル火山噴火(アイスランド)

2021.3.30更新

 現地時間3月19日夜,アイスランドの首都レイキャビクから50km圏内にあるファグラダルスフィヤル火山が噴火しました.これは東京から高尾山位の距離にあたります.

 噴火当初は立入禁止になりましたが,早くも翌日には解禁され,多くの研究者や観光客が詰めかけました.溶岩間近から撮った画像やドローンを使った動画など,火口付近の噴火の様子を捉えているいろいろな映像が出ています.ライブ映像は特に勉強になり、学校の教材としておすすめです。

 

ライブ映像(Livestream Events配信):https://www.youtube.com/watch?v=EjaoGITWHoU

 

  アイスランドといえば日本と同じく有数の火山大国ですが,火山の性質には大きな違いがあります.日本列島はプレートが沈み込む「海溝」に沿って位置していますが,アイスランドは2枚のプレートが離れていく「海嶺」と,マントルから直接マグマが湧き上がってくる「ホットスポット」の上にできた島です.

 溶岩の粘性が非常に低くダラダラと流れていく,ハワイのキラウエア火山の溶岩によく似ています.厚い氷河の下に湧き出たマグマは台形の形をした「卓状火山」になります.日本の安山岩質の溶岩とは随分違います.

 しかし氷河が薄いとマグマは大爆発(水蒸気爆発)を起こします.2010年春に噴火したエイヤフィヤトラ氷河噴火はヨーロッパ社会に大きな影響を与えました.水によって急冷されたマグマは細かな火山灰を生成しました.高く立ち上った噴煙はそれをヨーロッパ中に撒き散らし深刻な被害を及ぼしました.呼吸器や目などへの健康被害とともに,エンジントラブルなど航空路へ1ヶ月にわたって混乱をもたらしました.

  

 今回の噴火は氷河のないところで起こったため大爆発にはならず,溶岩もさらさらと流れていきます.そのため被害の範囲が予測しやすく近づくことができるのです.

 

 映像を見ると色んなものが見えてきます.溶岩の粘性が低いので,冷えて固まった表面だけ残して中は流れ去ってしまう「溶岩トンネル」ができています.そこに次に来た溶岩が吸い込まれ,あるいはトンネルの天井を破壊して天井の破片を沢山載せて流下していきます.

 ありがたい事にアイスランドまで行かなくても24時間ライブ映像で観察することができます.いろんな溶岩の様子を探してみてはいかがでしょうか.

 

 今回の噴火は10年前の様は広範囲に及ぶ被害の心配はなさそうですが,現地では火山ガスの放出が心配されています。

 それにしても隠すものが何もなく丸見えなのが驚きですね。

 

参考:

東京大学地震研究所>地震・火山速報>2010年4月 エイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火(アイスランド) 

日本地質学会>地質災害調査−活動状況・関連情報>2010年>アイスランド火山噴火と噴煙

(W.K.)


2021年3月黄砂

2021.3.17更新

 3月15日,大規模な黄砂が中国北京市を襲いました.街がオレンジ色に霞むほど視界が悪く,健康被害も懸念されています.また,北京の2つの空港で欠航が相次ぎました.メディアで「この10年で最悪」と報道されたのを聞き驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか.

 この黄砂は翌16日には日本海北部まで、17日には本州にも到達しました.

 

 黄砂と呼びますが、実際に飛んでくるのは砂ではなく、砂塵嵐で発生した砂より細かい部分(30ミクロンから5ミクロン)だということが大事です.砂塵嵐を発生させた風については後述の山川さんの記事を御覧ください.この時期になると黄砂が発生するのは,冬季には地表が凍結したり(凍土帯),雪で覆われたりしていたのが,融けて地表が乾燥し始めたことを意味します.それが黄砂の始まる季節です.

 

 15日3時から16日15時までの黄砂の範囲(予測を含む)【気象庁黄砂情報による】

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 ところで,「この10年で最悪」ということは,10年前以前はどうだったのでしょう.

 

 北京市の黄砂といえば,時代は遡って2007年に,史上まれにみる規模?の黄砂があり,航空機もストップしました.また北京の研究機関でも建物の隙間から黄砂が入り込んで,情報機器が使えないなどの事態も発生しました.今回はどんな状況なのでしょうか?

 

 遠藤会員が中心になって運営していた「自然災害と環境問題」というサイトでは,毎年黄砂についての報告をしてきました.中でも2007年に山川会員が投稿した「2007年5月26~27日の稀にみる大規模黄砂について」という記事では,詳細に黄砂飛来のメカニズムを解説しています.是非ご覧ください.

 

自然災害と環境問題トピックス2007年「2007年5月26~27日の稀にみる大規模黄砂について」

 



2021.1.29 調布市で道路陥没-5 つつじヶ丘の位置図追加

2021.1.26 調布市で道路陥没-4 調布市つつじが丘における陥没、および空洞の発見に関連して

首都圏地盤解析ネットワーク 代表 遠藤邦彦

調布市つつじが丘における陥没について

 10.18 道路の陥没発生 

 その後も空洞が発見される 11月に続き,1月14日にも確認された.

 

 概要版の地形区分図を掲載していましたが,今回,1m等高線図,RCMapなどを参照して,当該地域の地形区分を見直しました(図1,図2).

図 つつじヶ丘の位置図
図 つつじヶ丘の位置図

 さらに,2020年12月の“東京外かく環状道路工事現場付近での地表面陥没事象の調査状況のご説明について“(東日本高速道路㈱ 関東支社 東京外環工事事務所)をHP上で見てみました.

 様々な調査が進行中で,検討が進んでいることが分かりました.

 “調査の状況”や“地盤の特性”などをみると、地層の構成を非常に単純に見ており,その地盤モデルに基づいて調査結果の判断をしているという印象です.すなわち、地盤構成は下位から上総層群の東久留米砂層,武蔵野礫層,沖積層,盛土となっています.私共は長年にわたって該当地域を含む武蔵野台地一帯の地質・地形調査をしてきましたが,この一帯は東京の南部にあっては最も複雑な地域にあたるにもかかわらず,基本データは多くはなく難儀している地域です.

図3 つつじヶ丘駅--陥没地点を通る北西-南東地質断面図に示すこの地域の地盤モデル(首都圏地盤解析ネットワーク)
図3 つつじヶ丘駅--陥没地点を通る北西-南東地質断面図に示すこの地域の地盤モデル(首都圏地盤解析ネットワーク)

 

 図3は、我々が限られた既存データから作成した地質断面想定図です.つつじヶ丘駅と陥没地点付近を通る北西-南東方向の断面です.図4はそれに基づく陥没地点付近の地盤モデル(未完)です.

 礫層は,M2a礫層,M2b礫層,M3礫層の3層のしっかりした礫層が認められ,そのほかに厚さのごく薄いTc礫層(立川礫層)や沖積層の礫層もあるようです.

 陥没地点付近の既存データがほとんどないために,正確なことは言えませんが,ここは立川ローム層に覆われた立川面と見るのが有力です.立川面であればこの野川一帯では立川礫層の上に軟弱な泥炭質シルト,粘土層を伴っている可能性があります(首都圏地盤解析ネットワークHP参照).

 もう一つ重要なのは,武蔵野礫層(M2a,M2b,M3の3層)の下位に,あまり固結していない泥層や砂層がある点です.私たちは東京層が礫層の下位に存在する可能性があると見ています.東京層と上総層群の境界は,未だこの図には描きこんでいません.

図4 陥没地点付近の地質断面想定図(首都圏地盤解析ネットワーク)
図4 陥没地点付近の地質断面想定図(首都圏地盤解析ネットワーク)

 

 この地域に接する世田谷区側ではデータが多く,上総層群の上位については,東京層基底礫層(世田谷層基底礫層),東京層(世田谷層)の軟弱泥層,武蔵野礫層(M2a,M2b,M3の3層に区分される),立川礫層(Tc-1,Tc-2に細分されるほか、野川泥炭層などもある),沖積層(七号地層,有楽町層下部・上部・最上部)に分けられており,調布市側で突然に単純になることは考えられません.武蔵野面(礫層)の細分や,武蔵野台地の地形区分についての詳細は,以下の文献を参照してください.

 

 なぜ陥没が生じたのか,空洞ができたのかを解明することは,大変重要なことですので,我々この地域の地盤を見てきた専門家が判断しうる,陥没地点付近の地質柱状図等の基本情報を是非開示してほしいと願っています.

 

<参考>

遠藤邦彦・千葉達朗・杉中佑輔・須貝俊彦・鈴木毅彦・上杉 陽・石綿しげ子・中山俊雄・舟津太郎・大里重人・鈴木正章(2019)武蔵野台地の新たな地形区分. 第四紀研究, 58(6), 353-375.pdfダウンロード

遠藤邦彦(2020)解説:首都東京の地形 ―武蔵野台地の区分(最新版)を紐解く―,2020年4月17日更新,当サイト>地盤なう地盤なう2020


2020.12.1 調布市で道路陥没-3 「東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会」報告

 調布市の陥没事故についてその後も複数の空洞が発見されており、調査が実施されています。どれも4-5mの深さで、沖積層に生じた空洞と考えられているようです。入間川に平行な縦断方向に調査が進むようですが、沖積層の性格を捉えるために横断方向の調査も実施してほしいと思います。沖積層と言っても様々な顔つき、性質をもっているので、詳細な調査が必要と思います。

 

東日本高速道路(NEXCO)企業情報サイトプレスリリース>東京外かく環状道路(関越~東名)工事現場付近での地表面陥没について【第11報】「東京外環トンネル施工等検討委員会 有識者委員会」開催概要

議事概要

地表面陥没箇所周辺の地盤調査で確認された新たな地中の空洞について

地表面陥没箇所周辺の調査の進捗状況について


2020.10.21 調布市で道路陥没-2 陥没地点周辺の地形図

訂正と追加 19日の記事に間違いがありましたので訂正し、図を追加します。

 

 陥没の位置は、立川面上ではなく、入間川(イリマガワ)の低地の縁にあたるところでした。図は1m等高線図です。その南側は武蔵野面の最も新しい時代のもので、中台面(M3面)です。中台面の南西に野川と野川に沿う低地、さらに立川面があります.

 陥没した地点は入間川の低地をつくる軟弱な沖積層の上に盛土したところのようです。

 19日に掲載した断面図は、この位置より若干西側を通るもので、ピッタリは合いませんが、大づかみにこの地域の地下の状況を見ることができると思います。


2020.10.19 調布市で道路陥没-1 狛江市ー調布市ー三鷹市牟礼断面図

  昨日【10月18日】調布市内で陥没事故がありました。東つつじヶ丘2丁目の市道に,約5m位の長さ、深さも5m位の穴が突然できたということのようです。その地下で外環道のシールド工事が進行中なので、関係があるかなどなど、詳細はまだ分かりませんが、とりあえず地下の状況が分かるように、調布市狛江と三鷹市牟礼を南北に結んだ断面図を示しておきます。

 陥没の位置は立川段丘面の上で、この付近では、地表から表土、立川ローム層、立川段丘礫層が続き、(10/21訂正)その下位は上総層群となっています。上総層群はここではいわゆる硬い泥岩ではなく、よく締まった砂層です。

 

 またごく近くを国分寺崖線が通りますが、この崖線のすぐ下にあたります。イメージとしては調布付近ではこんな風になっていると思います。 とりあえず速報です。


2020.1.22 チバニアンについて

 2020年1月17日、国際地質科学連合により、ついに「チバニアン(Chibanian)」が正式に決定されました。

 日本地質学会のサイトで国際年代層序表(International Chronostratigraphic Chart) がリンクされています。

 この表の一番左の列、

   顕生(累)界/代>

     新生界/代>

       第四系/紀>

        更新統/世>

          中部/中期が「チバニアン」になります。

 日本地質学会「GSSPシンポジウム:国際層序の意味と意義」報告国際年代層序表

 

 また、国立極地研究所のサイトで、提案申請についての経緯等が記されています。

 国立極地研究所地層「千葉セクション」のIUGS(国際地質科学連合)における審査結果について

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